努力するキリギリス

夕刊フジ「ジェネレーションギャップ研究所」連載中。コラムニスト/プロデューサー吉見鉄也のブログです。

CDバブルの時期に思ったこと

ソニー・ミュージックエンタテインメントから

田辺エージェンシーに転職する

数あるきっかけの中の一つ

 

当時、90年代半ば、エピックソニーのプロモーターで

篠原涼子さんも担当の一人でした

連ドラ「輝く季節の中で」への出演も決まった頃です

TKブームのファーストインパクト「愛しさとせつなさと心強さと」の

メガヒットを受けて躍進中の篠原さんと

下っ端ながら現場をご一緒出来た経験は本当に貴重でした

 

我々、エピックソニーのスタッフは

篠原涼子の新曲を売るべく篠原さんを宣伝します

でも、CDしか売ることが出来ません

正確に言えば、CD以外を売ることに加担しても

売り上げは上がりません

もちろん、間接的な影響を考えれば

金は天下のまわりもの、いつかは巡り巡ってくるのですが

ファミリーマートのCM出演のギャラは

エピックソニーには、直接的には入ってきません

ドラマのギャラも同じようなことです

 

そんな場に居て

それって、何となく、つまらないな~

篠原涼子のCDじゃなくて

篠原涼子を売った方が「得」なんじゃないの?

そんな思いが、転職への契機になったかもしれません

あれだけCDが売れまくっていた時代に

こんな事を考えてしまった僕は

きっと、おかしな人だったのでしょう

おかしな僕の電話を察した人が声をかけてくれたのがきっかけで

マネージメントの世界に異動したのでした

 

今、思い返すと

あの頃の判断、間違ってはいなかったけど

ドンピシャでもなかった

握手会という「ビジネス」に気が付いていれば

ねえ……ま、後悔先に立たず

 

で、音楽の現況は

音源(CD、MP3)は売れなくなったけど

体験(ライブ)は売れている

オールドスタイルの疑似体験(テレビ番組、雑誌)は弱り気味

ニュータイプ(ネット)はとりあえず元気みたい

全てをグルっと含めた音楽ビジネスは

金額ベースでは、何となく増えている

でも、この「グルっと」の範囲設定の妙で

どうにでも操作出来てしまいそうな数字なので何とも言えないけど

ざっとこんな感じですよね

 

「音楽」と「芸能」を明確に区別するのか

「音楽」を「芸能」の中に完全に内包させるのかによっても

この現況の見え方は全く異なってきます

僕は後者の考え方で転職をしたので

どちらかというと、現況も楽観的に捉えていますが

 

今、リアルな数字として知りたいのは

音楽業界を目指す人

表に出る演者、クリエイターも

裏方のスタッフも含めて

音楽を社会的な手段として「生きて」いきたいと思っている人は

増えているのでしょうか?

減っているのでしょうか?

 

ま、これも、「音楽」の意味をどこまで拡げるかによって

左右されてしまうのと思うのですが

何となく、今は、増えているような気がします

ならば、大丈夫なのかな~

とか、いまだにバブルっぽい思考の呪縛から解き放たれない自分であります  

 

ちなみに、最近は安室奈美恵ばかりを聞いています

8月のライブ、今から、楽しみ。